こんにちは。クライス音楽事務所代表の白井です。
今回は、私が長年にわたり音楽の仕事に携わるなかで、一貫して大切にしてきた考えについてお話ししたいと思います。
それは、「音楽を安売りしない」ということです。
この考えを貫いてきたことで、決して少なくない苦労も経験してきました。しかし、その一方で、素晴らしい演奏家の方々との出会いにも恵まれました。
なぜ私が音楽の安売りをしないのか。そして、プロの演奏家が積み重ねてきた努力や技術に、どのような価値があると考えているのか。
今回は、クライス音楽事務所の原点ともいえる、私自身の思いをお伝えしたいと思います。
本物の音楽には、それにふさわしい価値がある。
クライス音楽事務所では、創業以来、一貫して大切にしてきた考えがあります。
それは、「音楽を安売りしない」ということです。
音楽は、単なる商品ではありません。
長い年月をかけて受け継がれてきた文化であり、演奏家が人生をかけて磨き上げてきた芸術です。
その価値を十分に理解することなく、価格だけで判断してしまうことは、文化芸術そのものの価値を損なうことにつながるのではないでしょうか。
私たちは、そう考えています。
もちろん、価格が高ければ良い演奏というわけではありません。
大切なのは、演奏の質に見合った適正な対価が支払われること。
それが、クライス音楽事務所の基本姿勢です。
価格競争では、何度も負けてきました。
これまで、演奏のご依頼をいただくなかで、金額を理由にお仕事が成立しなかったことは数え切れないほどあります。
同じような編成の演奏でも、より安い金額を提示する事業者があれば、価格競争ではどうしても不利になります。
「もう少し安くできませんか?」
そのようなご相談をいただくことも、決して珍しくありません。
正直に申し上げれば、安売りをしないことで苦労したことは何度もありました。
目の前のお仕事を獲得するために、価格を下げた方が良いのではないかと考えたこともあります。
それでも、演奏家の技術や努力に見合わない金額で仕事を引き受けることは、できる限り避けてきました。
なぜなら、一度失われた芸術の価値を取り戻すことは、決して容易ではないからです。
演奏家は、何十年もの時間をかけて音楽を磨き続けています。
プロの演奏家がステージで演奏する時間は、30分かもしれません。あるいは1時間かもしれません。
しかし、その演奏の価値は、ステージに立っている時間だけで決まるものではありません。
幼少期から楽器を学び、音楽大学などで専門的な教育を受け、卒業後も日々の練習を欠かさず、何十年にもわたって技術と表現力を磨き続ける。
一流の演奏家ほど、そうした努力を当たり前のように積み重ねています。
お客様が耳にする美しい音色の背景には、膨大な時間と努力が存在しているのです。
演奏時間だけを基準に報酬を考えてしまえば、その価値を正しく評価することはできません。
演奏家への報酬とは、当日の演奏時間だけでなく、そこに至るまでに積み重ねられた技術、経験、芸術性に対する対価でもある。
私は、そのように考えています。
「金か、やり甲斐か」――心に残っているプロフェッショナルの言葉
私が大切にしている言葉があります。
元読売日本交響楽団のソロ・ヴィオラ奏者として活躍された、生沼晴嗣氏の言葉です。
「金か、やり甲斐か」
生沼氏が仕事を引き受ける際の判断基準として語られた言葉です。
私は、この言葉に本物のプロフェッショナルとしての誇りを感じています。
仕事として演奏を引き受ける以上、その技術と経験にふさわしい報酬があることは重要です。
一方で、たとえ十分な報酬が得られなくても、音楽家として挑戦したい、どうしても参加したいと思える仕事もあるでしょう。
そこには、音楽への情熱や芸術家としての信念があります。
つまり、単純に報酬の高い仕事だけを選ぶということではありません。
報酬に見合う仕事なのか。それとも、報酬を超える芸術的な価値や意義がある仕事なのか。
そのどちらかがあるからこそ、プロフェッショナルとして全力で取り組める。
私は、この言葉をそのように受け止めています。
そして、クライス音楽事務所が演奏家と仕事をするうえでも、大切な考え方になっています。
若い演奏家に伝えていること
私は若い演奏家に、よく次のようなことを伝えています。
「自分の演奏に自信があるのなら、自分を安売りしてはいけない」
もちろん、若い頃には経験を積むことも重要です。
報酬だけでは得られない貴重な経験や、人との出会いもあります。
しかし、仕事を得るために安い金額を提示し続けることが、必ずしも演奏家としての成長につながるとは限りません。
自分の演奏に誇りを持つこと。
自分の技術を磨き続けること。
そして、その価値を正当に評価してくださる方々との信頼関係を築くこと。
それが、長く音楽家として活動していくために必要なのではないかと思います。
安売りをしなかったからこそ、優れた演奏家が集まるようになりました。
価格競争に参加しないことで、多くの機会を逃してきたかもしれません。
しかし、長い年月を振り返ると、その選択は決して間違っていなかったと感じています。
クライス音楽事務所には、次第に優れた演奏家が集まるようになりました。
それぞれの分野で高い技術と豊かな経験を持ち、音楽に対して真摯に向き合う方々です。
演奏家の価値を理解し、適正な報酬を大切にする。
その姿勢が、演奏家との信頼関係につながってきたのだと思います。
そして、その信頼関係こそが、お客様に質の高い演奏をお届けするための大きな財産になっています。
良い演奏家が集まるから、良い音楽を提供できる。
これは、とてもシンプルですが、私たちの仕事において最も大切なことの一つです。
お客様にとっての「適正価格」とは
ここまで、音楽を安売りしない理由についてお伝えしてきました。
しかし、私たちは決して、高額な演奏を提供すること自体を目的としているわけではありません。
クライス音楽事務所が目指しているのは、「本物の音楽を適正価格で提供すること」です。
例えば、企業の周年記念式典、国際会議、ホテルでのレセプション、結婚披露宴など、それぞれの場面で求められる音楽は異なります。
大編成のオーケストラがふさわしい場合もあれば、たった一人の優れた演奏家による演奏が、何よりも心に響く場合もあります。
私たちは、ご予算に合わせて演奏家の価値を下げるのではなく、ご予算のなかで最も効果的な編成や演出を考えます。
演奏家の人数、楽器の組み合わせ、選曲、演奏時間、演出方法。
さまざまな工夫によって、限られた条件のなかでも質の高い音楽をお届けすることは可能です。
価格を下げるために演奏の質を犠牲にするのではなく、音楽の価値を守りながら、お客様にとって最適な提案をすること。
それが、音楽事務所としての私たちの役割だと考えています。
音楽の価値を、次の世代へ
文化芸術は、一朝一夕に生まれるものではありません。
先人たちが築いてきた伝統を受け継ぎ、演奏家が努力を重ね、それを聴く人々が支えることで、文化は次の世代へとつながっていきます。
演奏家が正当に評価され、誇りを持って音楽活動を続けられる環境をつくること。
それも、音楽に携わる私たちの大切な責任だと思っています。
これからもクライス音楽事務所は、価格だけを競うのではなく、音楽そのものの価値を大切にしていきます。
そして、私たちの考えに共感してくださるお客様とともに、本物の音楽が持つ感動を、より多くの方々へ届けていきたいと願っています。
本物の音楽を、適正な価格で。
それが、クライス音楽事務所の変わらない信念です。











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